ネット通販の利用が広がり、マンションでも玄関前やエントランス付近に荷物を置く「置き配」が当たり前になってきました。不在でも荷物を受け取れる便利な仕組みですが、その一方で「隣の部屋の前に置かれていた」「配達完了の写真が自分の部屋ではなかった」といった誤配のトラブルも起きています。
レバレジーズの調査では、置き配利用者の17.9%が何らかのトラブルを経験しており、その内容で最も多かったのが「誤配」(46.2%)でした。同じような部屋が並ぶマンションは、部屋番号の取り違えが起こりやすい環境でもあります。
この記事では、マンションの置き配で誤配が起きる原因、誤配に気づいたときの対処法、責任の考え方、そして管理組合・オーナーができる防止策を整理して解説します。
まずは、置き配の誤配がどの程度起きているのかを調査データから確認しておきましょう。
| 調査 | 主な結果 |
|---|---|
| レバレジーズ(2026年7月/647名) | 置き配の利用経験は78.4%。利用者の17.9%がトラブルを経験し、内容は「誤配」46.2%が最多、「荷物の破損・汚損」42.9%が続く |
| NEXER(2026年4月/500名) | 郵便物を含む受け取りで、誤配・誤投函を経験した人は28.4%。経験者の59.9%が配達業者・郵便局に連絡 |
| ヤマト運輸(2025年11月/1万1,735名) | 置き配の利用経験は75.0%。置き配を利用しない理由は「盗難リスクが不安」が66.3%で2年連続の1位 |
置き配はすでに多くの人が利用している受け取り方法ですが、利用者のおよそ6人に1人が何らかのトラブルを経験し、そのうち誤配が最も多いという結果です。レバレジーズの調査では、トラブルを経験した人の39.6%が「高価な商品は置き配を避けるようになった」と回答しており、誤配や盗難への不安が置き配の使い方そのものに影響していることがわかります。
戸建て住宅と比べて、マンションには誤配につながりやすい条件がいくつか重なっています。代表的なものを見ていきましょう。
マンションでは、同じデザインの玄関ドアが共用廊下に並び、部屋番号も「301」「302」のように1桁違いで続きます。さらに、各階で同じ間取りが積み重なっているため、階数を1つ間違えるだけで、見た目がほぼ同じ別の部屋の前に置いてしまうことがあります。限られた時間で多くの荷物を届ける配達員にとって、取り違えが起こりやすい環境といえます。
部屋番号のプレートが小さい、色あせている、照明が暗くて読みにくいといった物件では、配達員が番号を確認しにくくなります。表札を出していない住戸が多いマンションでは、部屋番号表示が唯一の目印になるため、その見やすさが誤配の起こりやすさに直結します。
LIFULL HOME'Sの調査(2025年6月掲載物件)では、全国の賃貸マンションの66.3%が宅配ボックス未設置で、宅配ボックスがなくオートロックがある「置き配が難しいとみられる物件」も19.5%ありました。宅配ボックスがない、または満杯の場合は、玄関前やメーターボックス、エントランス付近など、建物ごとに異なる置き場所を配達員がその場で判断することになり、置き間違いが起こる余地が大きくなります。
置き配では、配達完了の通知とあわせて置いた場所の写真が送られるのが一般的です。しかし、マンションの玄関前は似た風景になりやすく、写真を見ても自分の部屋かどうか判断しにくい場合があります。国民生活センターにも、置き配で届いたはずの荷物が見当たらず、送られてきた写真を確認すると自宅ではなかったという相談が寄せられています。
誤配は「自分の荷物が届かない」場合と「他人の荷物が自分の部屋に置かれていた」場合の2パターンがあります。それぞれの対処法を確認しておきましょう。管理組合・オーナーとしても、入居者から相談を受けたときの案内に役立ちます。
国民生活センターは、置き配を利用する前に利用規約を読み、誤配や盗難の際の補償の有無と連絡先を確認しておくこと、配達完了の通知を受けたら早めに荷物を引き取ることを呼びかけています。発見が遅れるほど荷物の行方を追いにくくなるため、通知を受けたらすぐに確認する習慣が大切です。
郵便物については、郵便法第42条で、誤配達を受けた人はその旨を表示して郵便ポストに入れるか、日本郵便に通知しなければならないと定められています。また、他人の荷物を自分の物にしてしまうと、占有離脱物横領罪(刑法第254条)に問われるおそれがあります。「自分宛てではない荷物は開けず、使わず、配送会社へ」が基本です。
マンションで誤配や盗難が起きると、入居者から管理会社や管理組合に相談が寄せられることがあります。しかし、置き配は基本的に荷物を受け取る人と配送会社・通販サイトとの間の取引であり、管理組合やオーナーが当然に責任を負うものではありません。
国土交通省が2024年6月に公表した「置き配に関する使用細則を定める際のポイント」でも、置き配の依頼や荷物の管理は区分所有者等が自らの責任で行い、管理組合やマンション管理業者は責任を負わない、という規定例が示されています。あわせて、置き配を利用できる時間帯や置き場所、留め置き期間、違反時の対応などを使用細則で明確にしておくことが推奨されています。
ただし、責任を負わないことと、何もしなくてよいことは別の話です。誤配や盗難が続けば入居者の不満は物件の評価に向かい、「このマンションは荷物の受け取りが不安」という印象が退去や空室につながるおそれもあります。
なお、国土交通省では置き配を標準的なサービスとして位置づけるための標準運送約款の見直しが検討されており、2025年11月の大臣会見では、住民のセキュリティー確保が大前提であることや、置き配に伴うリスク分担のあり方を整理していく方針が示されました。置き配がさらに一般化すれば、マンション側の受け取り環境づくりの重要性はいっそう高まると考えられます。
置き配標準化の動向については、以下の記事で詳しく解説しています。
誤配の多くは、配達員が「どこに置けばよいか」「どの部屋か」を迷う場面で起こります。マンション側でその迷いを減らす工夫をすることが、誤配防止の近道です。
まず取り組みやすいのが、部屋番号プレートの見直しです。文字が大きく、背景とのコントラストがはっきりした表示に替えるだけでも、配達員が確認しやすくなります。共用廊下の照明や、各階のエレベーターホールの階数表示もあわせて点検しましょう。階数と部屋番号がひと目でわかる状態をつくることが、取り違え防止の基本です。
置き配を認める場所や時間帯、留め置き期間などが決まっていないと、配達員も入居者も判断に迷います。国土交通省の使用細則のポイントを参考に、置き配のルールを明文化し、掲示物や入居時の案内で共有しておきましょう。入居者には、注文時に置き場所を具体的に指定すること、配達完了の通知を受けたら早めに回収することも呼びかけておくと効果的です。
誤配と盗難の不安を同時に減らす手段として有効なのが、宅配ボックスの設置・増設です。宅配ボックスに預けられた荷物は施錠された状態で保管されるため、玄関前に置きっぱなしになる置き配に比べて、第三者の持ち去りや置き間違いによるトラブルを抑えやすくなります。
また、受け取り場所がエントランスなどの決まった位置に集約されることで、配達員が住戸ごとに置き場所を判断する場面も減らせます。機種によっては、荷物が預けられたことを入居者に知らせる機能を備えたものもあり、届いた荷物にすぐ気づけることも安心材料になります。
すでに宅配ボックスがある物件でも、台数が足りずに満杯になりやすい場合は、結果として玄関前への置き配が増えてしまいます。荷物量に対して台数が足りているか、定期的に見直すことが大切です。
エントランスや宅配ボックス周辺、共用廊下に防犯カメラや照明を整備しておくと、盗難の抑止につながるだけでなく、誤配が起きた際の状況確認にも役立ちます。ただし、映像の閲覧や提供には個人情報やプライバシーへの配慮が必要です。誰がどのような手続きで映像を確認できるのか、あらかじめルールを決めておきましょう。
このサイトでは、設置目的に合わせた宅配ボックスメーカー・設置業者の選び方について解説しているので、参考にしてみてください。
誤配や盗難の対策を目的に宅配ボックスを導入・増設する場合は、次の点を確認しておくと、入居者にとって使いやすい受け取り環境を整えやすくなります。
建物の構造や共用部のスペースによって、設置できる製品や工事の内容は変わります。現地の状況を確認したうえで、物件に合った製品と設置方法を提案してくれる業者に相談するのが確実です。既存マンションへの後付けや、補助金の活用を検討している場合は、以下の記事も参考にしてください。
置き配はすでに多くの人が利用する受け取り方法ですが、調査では利用者の17.9%がトラブルを経験し、その中で最も多いのが誤配でした。同じような玄関や部屋番号が並ぶマンションは、置き場所の取り違えが起こりやすい環境です。
誤配に気づいたときは、自分の荷物なら通知と写真を確認して配送会社や通販サイトへ、他人の荷物なら開封せずに配送会社へ連絡するのが基本です。管理組合やオーナーが置き配の責任を直接負うわけではありませんが、誤配が続けば入居者の満足度や物件の評価に影響します。
部屋番号表示の見直し、置き配ルールの整備、宅配ボックスの設置・増設、防犯カメラや照明の整備を組み合わせ、入居者が安心して荷物を受け取れるマンションづくりを進めていきましょう。
建物の戸数やタイプによって入居者の生活スタイルも異なり、宅配ボックスに求める利便性も異なってきます。宅配ボックスには多種多様な種類・機能があるので、入居者の生活シーンを考えて適切な製品とメーカーを選びましょう。
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