国土交通省は2025年6月に「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」を立ち上げ、置き配など多様な受け取り方法の普及や宅配サービスの在り方の見直しを議論し始めました。大手報道でも、標準運送約款を見直し「置き配を標準、手渡しは追加料金」とする方向性が取り上げられています。
ただし制度の詳細や開始時期は現時点では確定しておらず、導入時期は未定です。集合住宅の現場では、制度化の有無にかかわらず、管理規約・共用部の扱い・防災法令の順守・宅配ボックス整備といった論点を同時に検討する必要があります。
この記事では、置き配標準化の検討状況と想定タイムライン、マンションや集合住宅における運用ルール、宅配ボックス導入の実務ポイント、利用できる補助金制度などを法人向けに整理して解説します。
2025年6月26日、国土交通省は「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」第1回を開催し、置き配など多様な受け取り方法の社会的普及や、対面を前提とした宅配サービスの見直しに向けた方策の議論を開始しました。国土交通省の公式HPには第2回(2025年7月25日)までの開催状況が記されており、足元の議論が継続中であることが確認できます。
日本経済新聞やNHKの報道によれば、国土交通省は標準運送約款を見直し、「在宅・不在を問わず置き配を標準とし、手渡しは追加料金とする」方向で検討に入ったとされています。年内に方向性をまとめる見通しですが、実際の約款改正や施行時期はまだ公表されていません。パブリックコメントなどの手続きを経る必要があるため、導入時期は現段階では未定です。今後は審議資料や議事概要、パブリックコメント告知などの公式情報を定期的に確認し、最新動向を把握しておくことが重要です。
マンション・集合住宅で置き配を運用する際は、管理規約と使用細則で、置き配を認める時間帯、置ける場所、留め置き期間、利用不可品目、違反時の是正手続、責任の所在などを明確化することが実務上の前提になります。国土交通省は2024年6月7日に「マンション標準管理規約」を改正し、宅配ボックス設置の決議要件の明確化等を行うとともに、置き配に関する使用細則を策定する際のポイントを示しました。
さらに2025年3月27日付で関係団体に対し三部局連名の通知を発出し、周知を図っています。加えて、消防法は廊下・階段・避難口等に避難上の支障となる放置を禁じており、具体の可否は廊下幅・形状等を踏まえ個別に判断されます。
実務では、専有部玄関前のごく短時間の留め置きなど、避難の支障とならない態様に限って運用する、共用廊下の恒常的占用を避ける、監視カメラや記録でトラブル抑止を図る、といった設計が求められます。管理組合や管理会社の責任範囲は、細則で「依頼者(区分所有者・入居者)が自己の責任で管理する」と明示する例が国交省資料に示されており、標準化の有無に関わらず、住民合意に基づくルール整備が不可欠です。
置き配の標準化検討の背景には、再配達の高止まりと労働力制約があります。国土交通省のサンプル調査では、2024年10月の全国推計で再配達率は約10.2%でした。政府は物流政策の枠組みで再配達削減を掲げており、受け取り方法の多様化(宅配ボックス・置き配等)を推進してきました。
集合住宅では、オートロックや高層階エレベーター待ちが配送効率を下げる一因となるため、共用部に設置した宅配ボックスは、再配達の抑制、配達員の館内動線短縮、荷物盗難の抑止、長時間の留め置き回避という点で合理的な受け取りインフラになります。
もっとも、ボックスの管理責任、滞留防止のルール、非常時の動作、サイズ外・冷蔵冷凍物の扱いなど運用設計が甘いと、共用部の混雑やクレーム増につながります。置き配が制度として普及しても、盗難・紛失のリスクはゼロにはならないため、マンション側は映像記録・巡回・掲示等の抑止策、事業者側は配達証跡の高度化、入居者は受け取り意思表示・即時回収の徹底といった三者の役割分担を前提に、宅配ボックスを中核とする受け取り体制を設計するのが現実的です。
宅配ボックスは多くのメリットがある一方、設置場所や管理方法を誤るとトラブルにつながります。実際の導入にあたっては、注意点を事前に把握しておくことが重要です。
まず現状の受け取り実態を把握し、再配達の発生や盗難・滞留等の苦情件数、オートロック通過の困難さ、共用廊下幅や動線を実測します。
マンション標準管理規約の改正趣旨と国交省の使用細則を参照しながら、置き配と宅配ボックスを併用する受け取り方針を案にまとめます。案には、置ける場所と時間、留め置き期限、不可品目、違反時の是正、責任の所在、消防法上の配慮、記録・監視の方法、個人情報の取り扱い、清掃・衛生といった運用条項を含めます。
理事会で案を詰めたら、必要に応じて規約または使用細則の改定議案を作成し、決議要件(宅配ボックス設置は加工が小さい場合は普通決議で実施可能との考え方がコメントに明示)に沿って総会に上程します。
設置場所の寸法・避難動線・監視視野・照明・電源・ネットワーク・操作性(高齢者配慮)・トレーサビリティ(配達証跡・履歴管理)・メンテ性・保守費を比較します。工程表(施工・試運転・説明会・引渡し)と並行して、宅配事業者各社と運用連携のプロトコル(ボックス優先投入・置き配の基本方針・証跡撮影の仕様)を取り決めます。
稟議では、以下の評価軸を明確に整理して意思決定資料を整えます。
具体的な設置工程を把握したい方は、以下の解説も参考にしてください。
国の恒常的な集合住宅向け支援としては、国土交通省の「子育て支援型共同住宅推進事業」があり、令和6年(2024年)1月19日から宅配ボックス設置が補助対象に追加されています。2025年度(令和7年度)も継続しており、子育て世帯の入居率が3割以上の既存の共同住宅(賃貸・分譲)における宅配ボックス設置工事が対象で、補助は最大50万円(棟)までと案内されています。
< p>令和7年度の申請期間は2025年4月1日から2026年2月27日までで、事前審査(事前相談期間)を経る必要があります。管理組合・賃貸オーナーは、要領(令和7年7月18日公開版)と、専用窓口サイトの最新案内を必ず確認してください。地方自治体独自の補助制度については、地域ごとに内容や条件が異なります。そのため、導入を検討される際には、該当自治体の公式告知ページを確認し、最新の情報をご参照ください。補助制度の内容や対象条件については、下記で詳しくご紹介しています。
置き配の標準化は2025年時点で検討段階にあり、年内に方向性が示される見込みと報じられていますが、施行時期や具体ルールは未定です。集合住宅の現場では、制度化の有無にかかわらず、管理規約・使用細則・消防法に適合した受け取り体制の設計と、宅配ボックスを核にした運用の整備が喫緊です。
まずは共用部の基礎条件と現状課題を棚卸しし、標準管理規約の考え方を踏まえたルール案を作成し、機器・施工・運用まで一気通貫で計画してください。補助金は要件適合性とスケジュールの管理が肝要です。次の一手として、要件整理と機種選定の短期診断を行い、稟議用の効果試算(再配達削減・盗難苦情減・労務削減)を作成しましょう。
このサイトでは、設置目的に合わせた宅配ボックスメーカー・設置業者の選び方について解説しています。導入検討の第一歩としてぜひ参考にしてください。
建物の戸数やタイプによって入居者の生活スタイルも異なり、宅配ボックスに求める利便性も異なってきます。宅配ボックスには多種多様な種類・機能があるので、入居者の生活シーンを考えて適切な製品とメーカーを選びましょう。
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